くだらないけど大切な事

いつだったか


「出産後 育児に懸かりっきりになり
  自分にかまってくれなくなった妻を殺害した夫」


というニュースを見て
「あぁー‥‥」といろんなことを思い出しました




赤ちゃんがある程度大きくなるまで
おかあさんという仕事は本当に大変で


乳をやれば 飲んだ飲まない 吐いた下した
おしめをかえれば もれたかぶれた


‥‥と てんやわんやです 毎日お祭り


大忙しなのに加えて たぶん
ホルモンとかも関係してるんだとおもうけど
頭の中がその
『産まれたての赤ちゃんの事ばっかり』
に なってしまって
ダンナや上のこどものことは
「どうでもいいこと」になりがちでした


‥‥もしかしたら
わたしだけなのかも知れないけど


二回出産して 二回ともそうでした




それに加えてこっちは
テレビ見れない 本読めない 夜眠られない
外出できない 化粧できない 髪はボサボサ
生活パターンが激変して
ものすごいことになってるのに


ダンナはといえば いままでと全く同じリズムで
仕事いって 風呂はいって ご飯食べて
夜中遅くまでテレビゲームして
休みの日には昼ごろ起きてきて
しかも昼寝して


夕方起きてきて また夜中遅くまでゲームして
夜泣きしたら「うるさい」といい
朝 泣いたら「うるさい」といい
(だっこぐらいしてくれ)
ゲーム中泣いたら「うるさい」といい
(シュミレーションゲームに音はいらない)
テレビ見てるとき泣いたら
「泣き止ませろ」といい
(こっちは用事があるのだ お前がやれ)


‥‥で こんなことが続くと
なぜかカッコ内にあるような苦情が
だんだん言いにくくなってくるんです
「てゆうか 気づけよ!」みたいな気分
本当にあれはなんでなのかな


疲れがたまって風邪引いて寝込んでも
「気合が足りないからだ」といい
あかちゃんが病気になっても
「まかす」と言い残して会社へ去ってゆく‥‥



こんななのに「夜は付き合え」という



朝 洗濯しごとをするとあかちゃんが泣き
夜中までゲームしてたせいで
まだ寝ているダンナが「うるさい」というので
洗濯はいつも夜やってました


朝早いし 夜泣きするし
昼も夜勤明けのダンナがいて寝らんないしで
眠くて眠くて
ヘロヘロになって干し物をしていても
知らん顔でゲームをしているダンナ


そんなときはとても孤独で
ベランダで泣きながらおしめ干して
泣きやんでから戻ってきたところで



「コスチュームを買ってきたから
  コレを着て今日はしよう」



とかいわれてごらんなさい
死にたくなります


で「疲れているのでかんべんしてください」
などと断るわけです


そうすると
「洗濯しごとが済むのをずっと待っていたのに」
といわれ
(じゃ ゲームしないで
 干し物ぐらい手伝ってくれよ!!!)
と そこで再び孤独を感じるわけです



そういうことが続きました
あの日もそうでした
「今日こそは あのコスチュームでしよう」
といわれて断ったのです



すると ダンナが突然激昂し


「もうこんなもんいらんわい!!」


と 怒鳴りながら
ナース服を壁に投げつけました


あまりにも唐突だったのと
いつものダンナからは想像もできないような
子供じみた行動だったので
とてもびっくりしたのですが
泣きそうな 悲しそうな顔を彼がしていたので
「あー この人も 寂しかったんだなぁ‥‥」と
その時に はじめて気づきました



それから
寂しがらせてた罪滅ぼしと実益もかねて
しかたないから
看護婦さんごっこに付き合ってあげましたとさ



すると 不思議なもので
今までいえなかった
心の中に溜まりっぱなしだった苦情を
やんわりとお願いできるようになるんですね


そうすると相手も
だんだん解ってくれるようになってくるんですね


そして孤独が解消されると
同じ作業でも辛さが激減するから
これもまた不思議


あんなに孤独だったのに
死にたい気分だったのに
たかが泣きべそで
たかが看護婦さんごっこで解決するんだから
やっぱ人間っておもしろいです



「件の事件のご主人も
 ナース服買って来ればよかったのに」
と 悲しくなった夜